Q. 従業員が業務中に腰痛を発症したため、病院へ行きましたが、この腰痛は労災に該当しますか?

A. 腰痛の労災は難しい点がありますが、下記二点の基準を満たしていれば、認定されることがあります。

業務上腰痛の認定基準等について(昭和51.10.16 基発第750号)
  1. 災害性の原因の場合(2要件が必要)
    (1) 通常の動作と異なる動作により急激な力が突発的な出来事として生じたこと
    (2) 腰部への力が腰痛を発症させ、既往症、基礎疾患を著しく増悪させたこと
  2. 被災害性の原因の場合
    作業態様、従事期間、身体的条件等細かい条件が定められているので詳細なチェックが必要である。
























Q. 運動競技会において怪我をした場合、労災認定を受けられますか?

A. 労災として取り扱われるか否かは次の二点を満たしているかで判断されます。

  1. 出場が、出張または出勤として取り扱われること
  2. 出場に関しての旅費等の費用が事業主によって負担されるものであり、労働者の負担するものでないこと
























Q. 職安の紹介により外国人労働者の雇入れを考えていますが、何か注意点はありますか?

A.  外国人は在留に関して、様々な制限があり、該当する許可等を得ていなければ、就労に関しては不法就労となります。そのため、パスポートや外国人登録証明書、登録原票記載事項証明書などの在留資格・在留期間を確認できる資料の提示を本人に求める必要があります。不法就労と知りつつ、雇用した雇用主は不法就労助長罪に問われます。
 なお、職安では外国人求職者については、事前に在留資格・就労制限を確認の上、事業所に紹介しており、採用に関して何か不安な点等あって、照会があった場合は教えるそうです。
























Q. 通勤手当が3か月毎に支払われていた者の離職票上の按分方法は?

A.  離職票には1か月の通勤手当を載せなければいけませんので、3か月を按分することになります。2円までの端数なら、離職日に近い月の1か月の月に配分します。
例えば3ヵ月の通勤手当が24,800円とすると
24,800÷3か月=8,266.6円
端数処理をして8,266円、8,266円、8,268円がそれぞれの月の通勤手当となります。
























Q. 退勤途上の電車内で暴行を受けました。通勤災害になりますか?

A.  通勤災害として認定されるには、「通勤に通常伴う危険が具体化した」を要件としており、それが「故意によって生じた災害は、通勤をしていることが原因になって災害が発生したものでないので通勤災害とは認められない(昭和48.11.22 基発644号)」としています。つまり、一方的な暴行を受けた場合はともかくとして、相手から仕掛けられた事であっても喧嘩になっての負傷は私的な怨恨関係とされて通勤災害の認定が困難になるということになります。
 したがって、このようなケースでの請求があった場合、第三者行為災害届の他に「暴行傷害事故報告書」等で状況を詳細に把握し認定の判断に当たっているようです。その場合、警察に被害届が提出されていると認定材料として有利になるようです。
























Q. 営業部長が取締役に就任しましたが、この営業部長の雇用保険の取扱はどうなりますか?

A.  取締役に就任した場合でも、労働者としての身分を有し、労働者としての賃金が役員報酬を上回る場合、引き続き雇用保険の被保険者でいられる場合があります。
 この場合、兼務役員雇用実態証明書の提出が必要になります。これには勤務態様に関する項目もあり、就業規則条項が全部適用を受けるのか、また代表権の有無等の確認も行われます。
 また、雇用保険料は、労働者として受ける賃金のみから控除し、離職した場合の離職証明書への賃金額の記載も労働者として受ける賃金のみを計上します。つまり、役員報酬は、保険料の対象にもなりませんし、賃金日額の対象にもなりません。
























Q. 育児休業給付を受けずに長期休業していた者が退職しましたが、離職票の手続きはどうなりますか?

A.  離職票には退職日から遡って12ヶ月間の賃金を記入する必要があり、長期休業によって賃金支払がない場合、離職票の交付ができない可能性があります。
 産休の休暇届や母子手帳、長期休暇に入る前6ヶ月間の賃金台帳とタイムカードなどの添付書類により期間の圧縮が認められ、離職票が交付されることもありますが、育児休業届を申請するしないにかかわらず、育児休業給付受給資格確認票(様式33号の4)、雇用保険被保険者休業開始賃金証明書(様式10号の4)の手続きを行うようにしてください。


















Q. 当社は、仕事と子育ての両立支援として育児休業中の社員にも一定の給与を支払う方向で検討することになりました。
しかし、給与額によって雇用保険の育児休業給付金の額が違ってくると聞きました。どういうことでしょうか?

A.  育児休業中に支給されるものとして「育児休業基本給付金」があります。(受給資格確認が必要です)
この「育児休業基本給付金」の支給対象月に支払われる給付額は、休業する人の「休業開始時の賃金日額」と「休業期間中の支払い賃金額」に基づいて決まります。

※休業開始時の賃金日額とは、
育児休業開始前の6ヶ月間(各月に賃金支払い基礎日数が11日以上あること)に支払われた賃金の総額を、 180日で除して算出した額(上限あり)のこと

 この休業直前の6ヶ月間に賃金支払基礎日数が11日以上ない月があるときは、さらに休業開始日前2年前まで11日以上ある月が通算にして6ヶ月になるまでさかのぼって算定します。

※休業開始時賃金月額とは、休業開始時の賃金日額の30日分


この休業開始時賃金月額と休業期間中の各支給単位期間中に支払われた賃金額で下記のように支給額が決まります

休業期間中の支払われた賃金支給額
休業開始時賃金月額の50%以下または0円休業開始時賃金月額×30%
休業開始時賃金月額の50%を超え80%未満休業開始時賃金月額80%相当額と支払い賃金の差額分を支給
休業開始時賃金月額の80%以上支給されません

このように、育児休業期間中に支払う賃金額が、休業開始時賃金月額の50%以下であれば育児休業基本給付金は最大限受給できます。

なお、育児休業基本給付金を受給した人が、職場復帰後に被保険者として引き続き6ヶ月間雇用された場合にまとめて支給される「育児休業職場復帰給付金」があります。
支給額は、
休業開始時の賃金日額の20%相当額×「育児休業基本給付金」を受給することができた期間の日数分です。

「育児休業基本給付金」は、休業期間中の各月ごとに(申請は2ヵ月ごと)支給されますが、この「育児休業職場復帰給付金」は、まとめて支給されます。
(これは育児休業した人の職場復帰や、その後の雇用継続を促進するものです。)












Q. 妊娠中の女性従業員が、出産前に自己都合により退職することになりました。3年以上雇用保険に加入していますが、出産や育児中に失業給付を受給できますか?

A.  雇用保険の失業給付(基本手当)は、雇用保険に加入し一定以上の被保険者期間*を有している人が退職し、さらに、「失業の状態」にある人に支給されるものです。
 

「失業の状態」とは、実際にハローワークに行き休職の申込みをし、さらに就職を希望する強い意志があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず職業に就くことができない状態にあることをいいます。そして、ハローワークからその認定を受けることが必要です。

 したがって、妊娠・出産・育児のため今すぐには就職できないときなどは「失業の状態」ではないので、その間に限って基本手当の受給はできません。
*自己都合退職は、「退職日以前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が通算12ヶ月以上有している」ことになります。

しかし、このような状態の人のために「受給期間の延長」という制度があります。

基本手当の受給期間は、原則として、退職日の翌日から1年間です。しかし、その間に病気やけが、妊娠・出産・育児などの一定の理由により引き続き30日以上働くことができなかったときは、その働くことができなくなった日数分の受給期間を延長することができます。ただし、延長が認められるのは最長3年間です。
受給資格がある人が退職後に出産・育児を控えているときは、この「受給期間の延長」の制度を利用してください。

「受給期間の延長」の手続きは、
上記の理由により引き続き働くことができない期間が30日を経過した日の翌日から1ヶ月以内に、住所または居所を管轄するハローワークに届け出ます。

なお、退職後に出産・育児により受給期間の延長を希望するときは、退職日の翌日から30日を経過した後の1ヶ月以内に届け出をします。
また、延長の申請は、妊娠中や体調不良により自身でハローワークに届出に行くことができないことがありますので、代理人や郵送での届け出も認められます。




















Q. 高年齢雇用継続給付で前月分を今月分として支払った場合に起こる問題点は?

A.  高年齢雇用継続給付の受給にあたっての賃金の範囲は、当該対象月に支払われた賃金のみであり、たとえ当該支給対象月を対象とした賃金であっても、他の月に支払われれた賃金は含まれません。
 また、合算した金額が上限を超えると支給対象にならないことも留意する必要があります。
























Q. 定年後に従業員を再雇用した場合、雇用保険の手続はどうすればよいのでしょうか?

A.  定年到達後に1日の空白もなく再雇用された場合、雇用関係は引き続き存続するものとして取り扱われます。したがって、基本的には被保険者資格の取得や喪失の手続きをする必要はありません。ただし、再雇用に伴って短時間勤務に移行する場合には、被保険者資格の取り扱いが変わりますので注意してください。
    具体的には以下のとおりです。
    再雇用されたことに伴い、1週間の所定労働時間が20時間未満となった場合
     雇用保険の被保険者資格を満たさなくなりますので、「資格喪失届」を提出します。
なお、再雇用後に資格を喪失せず他の事業所への転勤となった場合には、転勤後の事業所を管轄するハローワークに「転勤届」を提出します。


 また、定年後に再雇用される場合、定年前と比べて賃金のダウンが条件となることが多くあります。そのような場合、雇用保険から「高年齢雇用継続給付金」の支給を受けることができます。
 具体的には、一定の「受給資格」がある人が、以下の「支給要件」を満たしている必要があります。

    ■「受給資格」の要件
  1. 60歳以上65歳未満の被保険者であり、かつ
  2. 被保険者であった期間が通算して5年以上あること。
    ■「支給要件」(1〜3すべてを満たすことが必要)
  1. 60歳到達時点に比べて、各月の賃金額が75%未満に低下したこと。
  2. 各月に支払われた賃金額が、支給限度額未満であること。
  3. 各月について、育児休業給付または介護休業給付の支給を受けられないこと。
 高年齢雇用継続基本給付金を初めて受けようとする場合は、まず、「受給資格確認票(初回の支給申請書と兼用)」に加えて、60歳到達時点の賃金額を証明するために「60歳到達時等賃金証明書」を管轄のハローワークに提出します。受給資格が確認された場合、60歳到達時の賃金月額が登録されます。
 なお、「60歳到達賃金月額証明書」を提出すると、60歳から65歳未満の間に初めて離職した際に離職時の賃金と60歳到達時の賃金とを比較し、いずれか高い方の賃金日額によって支給される基本手当の額を決定する特例措置を受けることもできます。

























Q. 従業員は満65歳の誕生月に到達するまで勤務することが出来ますが、60歳を過ぎても賃金に変更はありません。この場合「60歳到達賃金月額証明書」を提出する必要はありますか?

A.  現在賃金の変更がなくても、今後状況が変化することも考えられます。この制度は65歳到達月まで有効であり、また、退職して他社へ再就職した場合に対象となることも考えられますので、「60歳到達賃金月額証明書」を提出は必要となります。
























Q. 割増賃金とは?

A.  労働基準法では、使用者は労働者に対し、原則として1週間40時間、1日8時間を超える労働をさせてはならないこと、また、少なくとも1週に1日、あるいは4週に4日以上の休日(法定休日)を与えなければならないことを定めています。
 法定労働時間を越えて労働させる場合や法定休日に労働させる場合、使用者には労使協定の締結、届出の義務があり、また実際に労働させたときは、原則として労働者に対して割増賃金を支払う義務も生じることになります。

割増賃金の対象となる労働は、時間外労働、休日労働、深夜労働の三つです。
  1. 時間外労働(割増率25%以上)
     法定労働時間を越えた場合の労働のことです。したがって、就業規則などで1日7時間の所定労働を定めている事業所では、7時間以上8時間以内の労働時間については、割増賃金の支払い義務はありません。法定労働時間である8時間を超えた場合に、通常の賃金の25%以上の割増賃金の支払い義務が生じます。

  2. 休日労働(割増率35%以上)
     法定休日における労働のことです。たとえば、週休二日制の事業所で毎週日曜日を法定休日と定めた場合、日曜以外の休日は法定休日ではありませんので、その休日に労働した場合でも割増賃金を支払う義務はありません。
    ただし、法定休日以外の休日に労働させたことにより法定労働時間(40時間)を越えた場合は、原則として時間外労働と同じ扱いになり、越えた時間について割増賃金(25%以上)の支払いが必要になります。

  3. 深夜労働(割増率25%以上)
     午後10時から翌日5時までのいずれかの時間に労働させることです。したがって、「夜勤」のように、法定労働時間内の労働であっても、この時間帯に労働したときは、使用者は通常の賃金の25%以上を支払わなければなりません。また、その深夜労働が時間外労働と重複する場合には25%+25%で50%以上、休日労働と重複する場合は25%+35%で60%以上の割増率となります。
























Q. 割増賃金の計算方法は?

A.  割増賃金の額は、計算の基礎となる一時間あたりの賃金額に、時間外労働等の時間数と1.0の基礎部分に割増率を加えた数を乗じて求めます。ただし、所定労働時間内に行われた深夜労働については、「1.0」の基礎部分は所定労働時間に対する賃金として支払われますので、深夜労働の割増のみが支払われることになります。
「一時間あたりの賃金額」とは、時間給制の場合は時間給そのものの額ですが、月給制の場合は、計算の基礎となる賃金を計算期間となる一ヶ月の所定労働時間数で割った額となります。月によって所定労働時間数が異なるときは、一年間における月平均労働時間数で割った金額としても差し支えありません。

 ただし、以下の賃金は労働とは直接的な関係が薄く、どちらかといえば個人的事情に基づいて支払われる賃金のため、割増賃金の算定から除外することができます。
  1. 家族手当
  2. 通勤手当
  3. 別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金及び一ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金
 この場合、一律に定額を支給するものについては、実質的には個人的事情に基づいて支払われる賃金ではないため、算定から除外できません。

 また、計算により一時間あたりの賃金や割増賃金の額に一円未満の端数が生じた場合は、法で定めた最低賃金基準を下回らないように端数処理をすることが必要です。ただし、50銭未満を切り捨て。50銭以上を1円に切り上げることは、法違反としては取り扱わないこととされています。


<割増賃金の計算例>
 ・計算の基礎となる賃金・・・月給200,000円
 ・月平均所定労働時間数・・・160時間
 ・時間外労働日数・・・・・・15時間         の場合


  200,000円÷160時間=1,250円(1時間あたりの賃金額)
  1250円×15時間×(1.0+0.25)≒23,438円(割増賃金支払額)
  *小数第一位は四捨五入


歩合給制の割増賃金の計算について














Q. 労働基準法の「管理監督者」と「名ばかり管理職」の違いについて?

A.  労働基準法自体、具体的な定めを置いていないのですが、労基法第41条に定める「管理監督者」については、労働時間、休日に関する労基法の規定が適用されませんから、労働者が「管理監督者」に該当する場合には、時間外労働、休日労働(深夜を除く)の割増賃金を支払う必要はありません。
  ただし、管理監督者の範囲については注意が必要です。
 どのような職務にある労働者が管理監督者に該当するかについては、いくつかの行政解釈がありますが、そのうち基本的なものの要約を紹介すると、次のようなものです。

 「管理監督者の範囲に関する基本通達」(昭和22.9.13 基発第17号、昭和63.3.14 基発第150号)

 法第41条第2号の「監督若しくは管理の地位にある者」とは、一般的には、部長、工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者の意であり、名称にとらわれず、実態に即して判断すべきものである。

 ●企業が任命する職制上の役付者がすべて該当するわけではないこと
 ●労働時間に関する法の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も労働時間等の規制にないような立場にある者にかぎられること
(出退勤について厳格な規制を受けているかどうか)
 ●職務内容、責任と権限、勤務態様の実態に基づき判断されること
(職務の内容が、ある部門全体の統括的な立場のあるかどうか)
 ●基本給、役付手当等においてその地位にふさわしい待遇がなされていること
(その地位にふさわしい管理職手当ないし役職手当などの特別手当が支給されているかどうか)
 ●管理監督者と同格以上に位置づけられ、経営上の重要事項の企画立案を担当するスタッフ職は該当すること
(労務管理上の決定権などについて一定の裁量権を有しているかどうか)

 企業内での管理職(店長等)が労働基準法における管理監督者に該当するか否かは、上記の基準が満たされることが必要となります。