当世労務・年金事情
雇用を保障するための3つの選択肢
    (1)当該定年の引き上げ
     現状では、定年年齢を65歳以上に定めている企業は1割以下です。定年年齢を65歳未満にしている場合は、定年年齢を「雇用確保スケジュールに合わせ、またはそれより早期に引き上げます。就業規則等に定められている既存の定年年齢を引き上げることで、対象者全員の雇用が自動的に延長されるので、法の趣旨からみれば理想的な方法です。

      <導入時の注意点>
    • 一律に定年年齢を引上げると人件費が増加します。
    • 勤続年数の延長によって退職金額の加算が必要になります。

    経費の負担増に対処しなければなりません。


    (2)継続雇用制度の導入
     希望に応じて、定年後も引き続き雇用する制度です。その場合、労働条件は事業主と労働者間で協議して取り決めることができます。 なお、継続雇用制度がある企業は67.5%となっています

     継続雇用制度には、以下の2種類があります。

    ・勤務延長制度
    (定年年齢に達した者を退職させずに引き続き雇用する制度)
    ・再雇用制度
    (定年年齢に達した者をいったん退職させた後に、再び雇用する制度)

    ※安定した雇用が確保されるなら、必ずしも労働者の希望に合致した職種や労働時間を受け入れて雇用する必要はありません。常用雇用のみならず、短時間勤務や隔日勤務なども含め、企業の実情にあった制度の導入が可能です。

    <導入時の注意点>
    (1)労使協定によって、対象となる労働者の選考基準を設定する
    (2)継続雇用に関する制度の確立
    (3)就業規則の整備
    などの取り組む必要があります。
    (事前に周到な準備が必要です)
    →導入に関しての詳細はこちら


    (3)当該定年の定めの廃止
     定年制のの廃止は労働契約期間に終期がなくなることを意味し、労働者が一定の年齢に達したことを理由に退職させることはできません。労働者の定着率向上に期待できる半面、人件費の増加や労働者を固定化することで、企業活動の停滞といった問題が発生する可能性もあります。

    <導入時の注意点>
     法律には、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」(労働基準法第18条の2)と明記されています。よって、定年制廃止後に従業員を退職させる場合は「客観的に合理的な理由」がなければ無効となります。

      客観的合理的理由とは
    1. 従業員の労働提供能力や適格性の欠如・喪失等
    2. 勤務成績の著しい不良
    3. 従業員の服務規程違反
    4. 経営の合理化による職種の消滅と他職種への転換不能
    5. 経営不振による人員整理
      など