Q. 法定労働時間と所定労働時間とは?

A.  労働基準法(労基法)では労働時間の上限を定めており、これを「法定労働時間」といいます。原則として法定労働時間は1日8時間、1週40時間となりますが、商業(卸売業や小売業など)、映画・演劇業(映画の製作の事業を除く)、保健衛生業(病院や診療所など)、接客娯楽業(旅館や飲食店など)のうち、労働者が常時10人未満の事業場においては、1週の法定労働時間は特例的に44時間となっています。
 労働者を法定労働時間を超えて労働させる場合には、時間外労働の関する労使協定(三六協定)の締結・届出を行い、時間外労働に対して法定の割増率以上の割増賃金を支給する必要があります。この手続きをとらずに法定労働時間を超える労働をさせると、労基法違反として罰則が科せられます。
 「一日」の範囲は、労基法に定めがないため、民法の一般原理に基づき、午前0時から午後12時までとするのが通常で、この場合、交代制勤務などで午後12時前に始まった勤務が翌日に及んだ場合の労働時間は、翌日が休日でないかぎり、前日の勤務と一体のものとして判断されます。例えば、18日午後9時から19日午前6時までの勤務の場合、18日の勤務と判断されます。また「一週」については、就業規則等に定めがあればそれに従い、そうした定めがなければ、通常は日曜日から土曜日までとします。

 また、使用者は前述の法定労働時間の範囲内で、一日の労働の始業・就業の時刻および休憩時間を就業規則等に定めなければなりません。それにより定められる労働時間の長さを「所定労働時間」といいます。
 所定労働時間が1日8時間であれば、「所定」=「法定」となり、「所定」を超える労働は原則として禁止で、三六協定に基づいて労働させる場合であっても割増賃金の支払が必要となります。しかし、所定労働時間が1日8時間を下回る場合で、「所定」は超えるものの「法定」は超えない労働(例えば、9時〜17時の7時間が所定労働時間で17時30分まで残業だった場合など)、いわゆる「法内残業」については、労使協定の締結も必要ありませんし、割増賃金も支払う必要はありません。ただし、就業規則等に「所定労働時間を超えて労働させることがある」旨の定めは必要です。また、法内残業に割増賃金を支払うか否か、支払う場合の割増率をどのように設定するかは、労使双方の合意により就業規則などに定めておくほうが望ましいでしょう。

 また、労基法では与えるべき休憩の時間を、1日の労働時間が6時間を超える場合には45分以上、8時間を超える場合には1時間以上と定めています。したがって、一日の所定労働時間が6時間を超え、8時間以内で、通常は45分の休憩を与えている事業場では、残業でその日の労働時間が8時間を超える場合は、終業までに更に15分以上の休憩を与えなければならないことになりますので、注意が必要です。


























Q. 法定休日と法定外休日の違いを教えてください。

A.  労働基準法(第35条)では、使用者は労働者に対して「毎週少なくとも一回の休日を与えなければならない」と定め、業務の都合などで毎週1回の付与ができない場合は、例外的に「4週を通じ4日以上の休日を与える」ことができるとしています。この休日が法定休日になります。
 法定休日に労働させる場合には、事前に休日労働に関する労使協定を締結し、労働基準監督署長に届出をしなければなりません。また、実際に休日労働させた場合には、3割5分以上の割増賃金の支払が必要となります。

 一方、週1回、または4週4回の法定休日を越える日数の休日を定めている場合、その休日のことを一般に「法定外休日」といいます。たとえば、週休二日制における法定休日以外の週1の休日や国民の祝日を休日とする場合などが法定外休日にあたります。
 法定外休日に労働させることは、労働基準法上の「休日労働」にはあたりませんので、休日に関する労使協定や3割5分以上の割増賃金の対象にはなりません。ただし、法定外休日に労働することによって1週間の法定労働時間である40時間を超える労働をした場合には、その超えた労働は法律上「時間外労働」の扱いとなります。この場合、事前に時間外労働に関する労使協定の締結・届出及び2割5分以上の割増賃金の支払が必要です。


























Q. 有給休暇について詳しく知りたい。

A.  労働基準法では、「使用者は雇入れの日から起算して6ヶ月間継続出勤し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、または分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない」(第39条第1項)と定めています。これが「年次有給休暇」というもので、一般的には「年休」や「有休」などと呼ばれているものです。
 同法が規定している「有休」の付与日数は、勤続6か月で10日です。その後、6ヶ月を越えた日から起算した継続勤務年数1年毎に2年目までは1日ずつ、3年目以降は2日ずつ加算されてゆき、最大20日とされています。ただし、通常の労働者よりも所定労働日数が少ないパートタイマーなどに対しては、同法で定めた所定労働日数に比例した日数の年休を付与すればよいとされています。これからの付与日数は法律で定められている最低基準の日数であって、この基準を上回る日数の年休を与えることは問題ありません。
パートタイマーの有休休暇についての詳細

 有休は、その労働者が初年度は6か月、それ以降は1年の継続勤務した期間について全労働日の8割以上出勤すれば当然に発生し、有休の権利を取得したことになります。「継続出勤」とは、労働契約関係が存続しているということで、継続的に出勤しているという意味ではありません。期間の定めのある労働契約が反復更新されている場合や、企業合併や在籍出向があった場合、定年後の再雇用なども実質的に継続出勤とみなされ、その期間に含みます。また、休職期間や試用期間も、ここでいう継続勤務した期間に該当します。
 出勤率は、 出勤した日÷全労働日 で求めます。「出勤した日」について労基法では(1)業務上災害により負傷または疾病にかかり療養のために休業した期間、(2)産前、産後の休業期間、(3)育児・介護休業法に基づいて育児・介護休業した期間は出勤したものとして取扱うことと定めています(第39条第7項)また、年休を取った日については、行政側の解釈で「出勤したものとして取扱う」ことが示されています。「全労働日」とは、労働契約上で労働の義務があるとされている日をいいます。原則的には、その期間の暦日数から就業規則などに定められている休日を差し引いた日数が全労働日ということになります。したがって、休日労働があった日は全労働日には含みません。

 また、有休を請求できる権利は、労働基準法(第115条)により、2年間で時効によって消滅します。つまり、有休が発生した日(基準日)を起点とした1年間に取得しなかった有休は、次の1年間に限り繰越すことができます。
 ここで、次の1年間に取得する有休は前年からの繰越分と当年の新規発生分のどちらと優先するのかという問題が生じますが、これについては労働基準法上特別の規定がないので、就業規則や労働協約に定めてあれば、それにしたがって扱うこととなります。定めがない場合は、通常前年度分からの使用とみなします。なお、年次有給休暇の買い上げの予約はできません。

法定の年次有給休暇の発生要件と付与日数(通常の労働者)
継続勤務年数・付与日数
6ヵ月 1年
6ヵ月
2年
6ヵ月
3年
6ヵ月
4年
6ヵ月
5年
6ヵ月
6年
6ヵ月以上
10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日
(各期間(年度)についての出勤率が8割以上)


























Q. 「休日の振替」と「代休」の違いを教えてください。

A.  「休日の振替」と「代休」では扱いが異なります。
 本来は休日と定められている日に労働させる代わりに、労働日である日を休日とすることを「休日の振替」といい、この場合、代わりとなる休日は事前に指定しているものとします。一方、「代休」とは、実際に労働者を休日に労働させた後で、代わりの休日を与える(特定の労働日の労働義務を免除する)ことをいいます。このように、「代わりに与える休日」を事前に指定するか、しないかの点において「休日の振替」と「代休」とは意味が異なっています。


 「休日の振替」の場合、同一の週内に休日の振替が行われると、もとの休日における労働は、労働基準法上の休日労働とはなりません。よって、休日労働に対する割増賃金を支払ったり、事前に休日労働に関する労使協定を締結する必要はありません。しかし、休日の振替が週をまたがって行われ、その結果、週の法定労働時間(原則40時間)を超えることとなった場合は、超えた時間については時間外労働として扱われますので、割増賃金(割増率25%以上)の支払いや、時間外労働に関する労使協定の締結・届出が必要となります。
 法律に則して休日の振替を行うためには、次の要件が必要であるとされています。

  1. 休日を振り替えることがある旨を就業規則などに定めておく。(使用者が労働者の個別的同意を得ずに休日の振替を命じるため)
  2. 実際に振り替える日を特定し、事前に労働者に通知する。(出来るだけ早く通知するほうが望ましいです。休日労働をさせた後に振替となる休日を特定したときは、「代休」として扱う必要があります)
  3. 休日の振替を行った場合でも法定休日(1週1日、または4週4日)を確保している。(確保していない場合、「休日の振替」の効果が失われ、法定休日に労働させたことと同じ結果になってしまう可能性があります)

 「代休」として扱われる場合には、以下のことに注意する必要があります。
  1.  労働させた休日が法定休日の場合は、それはあくまでも労働基準法の休日労働として扱われます。したがって、休日労働に関する労使協定の締結・届出を事前にし、割増賃金(割増率35%以上)を支払う必要があります。
  2.  労働させた休日が法定外労働日の場合は、その週の労働時間が法定労働時間を超えていなければ、法律法の割増賃金の支払いは必要ありませんが、法定労働時間を超えることになった場合は、超えた時間についての時間外労働にかかる割増賃金の支払や時間外労働に関する労使協定の締結・届出が必要となります。
 なお、代休を与えた日については、就業規則などにより無給とすることは何の差し支えもありません。


























Q. 休業手当について詳しく知りたい。

A.  「休業」とは、労働者が労働契約に従って、労働する意思があり、また労働を提供できる状態にあるにもかかわらず、使用者によって労働の提供を拒否されたり、使用者の責任により労働の提供ができなくなったりした場合をいいます。したがって、事業の全部または一部が操業停止となる場合だけでなく、特定の労働者に対し、その意思に反して就業を拒否する場合も「休業」の扱いとなります。
 労働基準法では、使用者の責任によって休業させた場合には、労働者の生活を保障するという観点から使用者は労働者に対して、休業期間中、平均賃金の60%以上の手当の支払いを義務づけています。これが「休業手当」です。休業は労働契約等において労働することが義務づけられている日について発生するものであり、就業規則や労働契約などにより、本来労働義務がない日として定められている休日については、休業手当の対象にはなりません。
 「使用者の責任」の範囲については、一般的に、天災事変などの不可抗力による場合を除いては責任を負うものとみなされます。具体的には次のような場合です。
  1. 資金、資材が調達できず、また、事業所設備の欠陥や不良のために休業した場合
  2. 年次有給休暇の計画的な付与による一斉休業となったために、年次有給休暇を有しない労働者を休業させた場合
  3. 労働組合のストライキがあった際、ストライキに参加しない非組合員などが就いている業務が存続していて、かつ、その業務に就くことが客観的に見て可能であるにもかかわらず、使用者が休業命令を出した場合
  4. 労働者を懲戒解雇にするべきか否かについて調査し決定するまでの間、出勤停止の措置をとる場合
 このほかにも判例で使用者の責任による休業が認められたケースがあります。
 休業手当も労働基準法上の賃金とみなされますので、通常の賃金支払日に支払うことが必要です。また、一労働日のうち、一部を労働し、一部を使用者の責任により休業したときは、労働した時間に対して支払われた賃金が平均賃金の60%より少ない場合は、その差額以上を支払わねばなりません。
 たとえば、平均賃金が10,000円の労働者の場合、労働した時間に対して支払われた賃金が6,000円以上であれば休業手当を支払う必要はありませんが、賃金が5,000円であったとすると、休業については、少なくとも1,000円を休業手当としてこの労働者に支給する必要があります。

























Q. ストックオプション(自社株購入件)の利益は給与所得に当たりますか?

A.  最高裁にて「職務遂行の対価として給付されたもので、給与所得に当たる」との判断が示されています。よって、ストックオプションの売却益は税率が低くなる「一時所得」ではなく、「給与所得」に当たるとするのが妥当だと考えられます。

























Q. 従業員が営業秘密を漏洩した。

A.  「不正競争防止法」には従業員が企業の営業秘密を漏洩したり、不正使用した場合、処罰の対象となると定めています。現行法では現職者のみが処罰の対象ですが、平成18年1月から施行される改正法では退職後の漏洩や不正使用についても新たに処罰の対象となります。
 例えば、退職者が転職先の企業と顧客リストなどの営業秘密を開示することを約束して転職し、実際に開示した場合に、本人と情報を受け取った企業が処罰されることとなります。

























Q. 外回りの営業など、会社の外で労働している従業員がおり、労働時間を把握することが難しいのですが……。

A.  労働基準法(第38条の2)には、外回りの営業や取引先への出張など、労働者が事業場の外で労働し、労働時間を把握することが難しい場合には、原則として、所定労働時間労働したものとみなすことができる制度が設けられており、これを「事業場外のみなし労働時間制」といいます。
 事業場外のみなし労働時間制は事業場外で業務を行うのに、通常、所定労働時間を超えて労働することが必要となる場合には、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」労働したものとみなすものです。また、この場合の通常必要とされる時間については、業務の実態がよく分かっている労使間で協議し、労使協定を締結したときは、協定で定めた時間がみなし労働時間となります。たとえば、通常7時間労働の事業場において、労使協定で「当該業務の遂行に通常必要される時間」を1日8時間と定めた場合、1日の労働時間について事業場外で労働したときは、協定で定めたとおり8時間労働したものとみなします。なお、労使協定で定める時間が1日の法定労働時間を超える場合、その協定の届出と時間外労働に関する協定(三六協定)の締結・届出、および時間外労働にかかる割増賃金の支払いが必要となります。
 事業場外のみなし労働時間制の対象となるのは、労働時間の全部または一部を事業場外で労働し、使用者の具体的な指揮監督が及ばないために労働時間を算定することが困難な場合です。ただし、事業場外で労働しても次のような場合は、指揮監督が及んでいるものとされ、この制度の対象とはなりません。
  1. 数人のグループで業務を遂行するとき、その中に労働時間を管理する者がいる場合
  2. 携帯電話などにより随時使用者の指示を受けながら業務を遂行する場合
  3. 当日の業務について具体的な指示を受けた後、事業場外で指示どおりに業務を遂行し、事業場に戻った場合
 また、上記以外の場合であっても、具体的な指揮監督のもとに労働している場合はこの制度の対象とはなりません。
 なお、2004年3月より、「情報通信機器を活用した在宅勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」が制定され、パソコンなどを使用する在宅勤務についても、事業場外のみなし労働時間制を適用することができるようになっています。