□ 割増賃金率が改正されます。

「改正労働基準法」が平成22年4月1日から施行されます。
今回はおよそ6年ぶりの改正で、

  1. 時間外労働の法定割増賃金率の引上げ
  2. 年次有給休暇の時間単位付与
  3. 特別条項付き協定で定める事項の見直し
などが主な改正内容となっています
この3つの中から、1、についてご説明します。

今回の改正の目的は、長時間労働を抑制し、労働者の健康確保や、仕事と生活の調和を図ることです。

〇1ヶ月60時間超の時間外労働が引上げ対象○
現行法令で「2割5分以上」と定められている時間外労働の割増賃金率について、
1ヶ月に60時間を超えて時間外労働をさせた場合には、その超えた時間の労働については「5割以上」の率に引き上げられます。ただし、改正法で定める中小企業(下記参照)の事業についは、当分の間、法定割増賃金率の引上げの適用が猶予され、施行から3年経過後に改めて検討することとされています。
また、1ヶ月60時間を超える時間外労働について、労使協定により割増賃金の支払いに代えて通常の労働時間の賃金が支払われる有休の休暇を付与することができます。
 ここでいう「1ヶ月」とは、暦での1ヶ月のことをいい、その起算日は、毎月1日、賃金計算期間の初日、時間外労働協定における一定期間の起算日などとすることが考えられますが、起算日は「賃金の決定、計算及び支払いの方法」として就業規則に記載する必要があります。
そして、1ヶ月の起算日から時間外労働時間を累計して、60時間に達した時点により後に行われた時間外労働が5割以上の率で計算した割増賃金の支払いの対象となります。

*割増賃金率の引上げが猶予される中小事業主の範囲(改正労基法第138条)
事業の種類
資本金または出資の額/常時使用する労働者数
小売業
5千万円以下、または50人以下
サービス業
5千万円以下、または100人以下
卸売業
1億円以下、または100人以下
上記以外
3億円以下、または300人以下

○休日労働との関係○
いわゆる法定休日(週1回または4週間に4日の休日)における労働については、現行法で「3割5分以上」の割増賃金率が適用されますが、法定休日以外の休日における労働は時間外労働に該当するため、残業などの時間外労働と同じように「60時間」の算定に含める必要があります。
したがって、就業規則などに、事業場の休日について法定休日と法定外休日以外の休日の区別を明確にしておくことが望ましいでしょう

○深夜労働との関係○
 深夜労働(原則午後10時から午前5時)については、現行法で「2割5分以上」の割増賃金率が適用され、時間外労働が深夜に及んだ場合は、時間外労働の「2割5分以上」と合わせて「5割以上」の割増賃金の支払いが必要となっています。
今回の改正により、深夜労働のうち、1ヶ月について60時間に達した時点より後に行われた時間外労働であるものについては、深夜労働の法定割増賃金率と60時間を超える時間外労働の法定割増が合算され、「7割5分以上」の割増賃金の支払いが必要となります。

ただし、前記の中小企業の事業については、当分の間、1ヶ月について60時間を超える時間外労働の法定割増賃金率の引上げが猶予されていることから、現行どおりの割増賃金率が適用されます。