【相談内容】
 遠距離の出張で休日に出発や帰着する場合、出張手当ではなく休日労働手当を支給するべきではないかと従業員から請求がありました。休日労働手当の支給は必要なのでしょうか?


  • 従業員の主張
     出張先へ移動するのに時間がかかるため、やむを得ず休日に出発したり、帰着したりし、休日にも時間的に拘束されることがある。これは休日労働にあたるのではないか。また、他の社員と比べて遠距離の出張が多いため負担も大きいので、考慮してもらいたい。

  • アドバイス
     出張にともなう移動時間については行政通達で「出張中の休日は、その日に旅行(移動)する等の場合であっても、旅行中における物品の監視等別段の指示がある場合のほかは休日労働として取り扱わなくても差し支えない」との見解が示されています。よって出張の移動途中で別段の指示や命令を受けていない場合、職務上拘束されているとはいい難く、休日労働には当らないと考えられます。
     ただし、この従業員のように、他の従業員と比べて遠方への出張業務が集中している場合などは休日出張以外の休日の取り方や業務内容、諸手当の見直しも含め、労使で充分に話し合いをする必要があるでしょう。


















【相談内容】
 定年後再雇用され、嘱託として働くこととなりました。年次有給休暇の付与日数について、定年前の勤続年数が通算されないと会社から説明がありましたが、納得できません。再雇用後も嘱託として勤務は継続しているのだから、年次有給休暇の付与日数についても過去の勤続日数を通算し、正社員と同等の日数を付与すべきではないしょうか。


  • 会社の主張
     退職にあたり、退職金を支払うだけではなく、有給休暇の残日数についても金銭を換算して支払っている。まったく新しい雇用契約での再雇用であるため、新契約の基準による付与日数となり、定年前の勤続年数を通算して正社員と同等の日数は付与できない。

  • アドバイス
     再雇用者の年次有給休暇の取り扱いについては、再雇用前後が労基法第39条に定める(年次有給休暇上の)勤続勤務にあたるか否かを、勤務実態に即して実質的に判断するべきものとされています。この場合、勤続勤務に含まれるものとして、通達で「定年退職による退職者を引き続き嘱託等として再雇用している場合(退職規定に基づき、所定の退職手当を支給した場合を含む)。ただし、退職と再雇用との間に相当期間があり、客観的に労働関係が断続していると認められる場合はこの限りではない」とされています。つまり、定年退職と再雇用との間に「労働契約が断続している」かどうかが問題となります。もしも、実質的に勤続勤務であると認められるなら、有給休暇の付与日数は定年前の勤続日数を通算し付与されます。
     また、嘱託としての勤務が一定の日数、時間以下の場合は正社員と同等の付与日数ではなく、その従業員の所定労働日数に比例した日数が付与されることになります。→参照


















【相談内容】
 職場での管理監督責任を問われ、降格・配転となり、給与も大幅に減額、配転先が自宅から遠いため、かなり通勤に時間がかかるようになりました。配転先では無理な仕事を命じられ、実績が上がらず、鬱病を発症し、客先でトラブルを起こしました。退職を迫られ、退職願を提出しましたが、それを撤回したいです。どうすれば良いでしょうか?


  • アドバイス
     退職願の撤回が妥当かどうか、労使で話し合うこととなります。
     主に検討されるのは次の2点です。

    1. 降格・配転は妥当か、業務上の必要性と労働者の責任および不利益を比較。
    2. 退職願の撤回について、強迫あるいは錯誤はなかったか。


















【相談内容】
 2年間近く3ヵ月毎に契約更新を行い、派遣社員として働いてきましたが、勤務中に負傷し、休業することになりました。休業中に更新時期となり、契約期間を3ヶ月から1ヵ月へ変更し、その後は更新しないとの連絡を受けました。理由の説明もなく、こちらの了承もなしの、一方的な通告でした。従来どおりの契約に戻すよう申し入れをしましたが、受け入れられませんでした。どうすれば良いでしょうか?


  • 従業員の主張
     理由も説明されない、一方的な変更は納得できない。休業を理由に契約を終わらせたいという意図が見える。これでは解雇も同然だ。今までどおり、3ヶ月の契約とし、更新も続けるべきである。

  • 会社の主張
     従業員との雇用契約は反復更新が前提とは確約していない。また、今回の契約内容の変更も業務上の災害との問題は関係なく、現在の派遣先の事情や見通しを考慮し3ヶ月契約はできないと判断したものであり、「雇い止め」ではなく、通常の期間満了によるものである。

  • アドバイス
     今回の場合、業務上の災害による休業中であり、雇い止めの際には、労働基準法第19条第1項の規定(「使用者は労働者が業務上負傷し、または疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間は解雇してはならない」)を留意すべきです。
     また、雇用契約期間については、過去2年近くにわたり3ヶ月毎に労使双方から異議の申し出なく契約更新されていたことから、契約社員にとっては次回も同じ条件で更新されるであろうと期待する状況であったと考えられます。派遣会社の場合は派遣先との契約内容の関連もありますが、次回の契約期間については特に事前の配慮と当事者が納得する説明が必要であると考えられます。


















【相談内容】
 試用期間の6ヵ月間の勤務の後、正社員に任用される予定でしたが、突然試用期間終了時での解雇を通告されました。会社側は解雇する理由を「割り当てられた仕事を十分にこなせないため」としていますが、納得できません。解雇を撤回させることは可能でしょうか?


  • アドバイス
     試用期間における解雇は、採用期間中の勤務状態により、採用時に知りえず、引き続き雇用することが適当ではないと判断する合理性がある場合に限って許されるものです。解雇理由の具体的根拠を示せない場合は解雇の撤回を検討すべきと考えられます。


















【相談内容】
 勤続年数18年の正社員で現在経理事務職に就いていますが、会社からいきなり来月から4万円の減給すると通知されました。理由は「会社に貢献できないから」と言われましたが納得できませんし、他の社員の職務怠慢は放置して自分だけ減給対象となるのでは正当な査定とは思えません。減給の撤回を求めたいです。


  • 会社の主張
     この労働者は社内の事務処理のOA化に十分対応できていると言えず、後輩社員より劣っているので賃金額を調整するために減給することにした。妥当な評価だと考えている。

  • アドバイス
     労働条件が個別契約で定められている場合、契約内容の変更は相手方の同意が必要となります。よって、一方的な賃金の減額はできません。ただし、就業規則等で労働条件が定められている場合はこの限りではありません。


















【相談内容】
 パートとして週5日、1日5時間で期間の定めなしの契約で勤務してまいりました。経営状態の悪化を理由に1週間後より週4日、1日4時間30分の勤務に変更することを告げられ、雇用契約書への署名押印を強く求められましたが、納得できません。今までと同じ労働条件で働きたいのですが、どうすればよいでしょうか?


  • アドバイス
     労働時間を減らすなど、労働条件の不利益変更については、労働者の同意が必要です。同意なしに一方的な変更を行うことは出来ません。労使双方で十分に話し合いを行ってください。


















【相談内容】
 業務上で犯したミスで自信を喪失し、就業規則の定めに従い、1ヵ月前に退職を申し出ましたが、会社からは担当業務に関する契約期間の都合上、退職日を2ヵ月先にしてほしいとのことで退職の申し入れを拒否されました。これ以上の勤務の継続は精神的に耐えられません。自分が申し入れた期日をもって退職したいのですが、どうすればよいでしょうか?


  • アドバイス
     労働者は、民法627条1項の規定に基づき、2週間の予告期間を置けば労働契約を解約することができるとされています。労働者の意に反し、退職期日を延長し、それまでの間の退職を認めないとすることは、労働者の退職の自由を制限し、労基法が定める人身拘束防止の諸規定に反するとされた判例もありますので、労使双方で改めて話し合いを行ってみてください。


















【相談内容】
 今まで期間の定めのないパートタイマーとして勤務していましたが、いきなり会社から1年間の有期雇用契約に変更するように求められました。契約書へのサインを求められ、難色を示したところ「サインするまでは仕事はさせない」と出勤を停止させられました。


  • アドバイス
     労働者の合意なく、契約期間の定めがなかった労働契約を一方的に有期雇用契約に転換させることはできません。また、契約書へのサインを拒否したことをもって「就労の意思なし」と判断して出勤を差し止めることは不当と言わざるをえず、休業させた期間については少なくとも労基法に定める休業手当の支払いも必要となります。


















【相談内容】
 同僚からいじめを受け、上司からも退職勧奨をほのめかすようなことを言われ、酷い嫌がらせを受けています。精神的にも疲れ、現在、精神科に通院しています。いじめや嫌がらせを止めるよう求めます。


  • 会社の主張
     労働者の勤務態度が悪かったため同僚が指導・教育的に行ったものであり、いじめや嫌がらせではない。
  • アドバイス
     労働者に対する言動が、人格権侵害と認められる場合もあります。また、いじめ・嫌がらせ、過度の叱責や執拗な追及行為などにより勤労意欲を失わせやがて退職に追いやるような行為を受けた場合には損害賠償請求が認められています。現在精神科へ通院していることもありますし、他の就業場所への移動も含めて検討すべきです。